セルフサービスポータルとは?導入が必要な企業の特徴7つを含めてご紹介します
セルフサービスポータルは、人の介入が必要な作業や繰り返しの作業を最小限に抑え、顧客満足度の向上やサービス提供者のコスト削減を実現するポータルサイトです。本記事では、そのセルフサービスポータルの定義からメリット、導入が必要な企業の特徴を詳しくご紹介します。
セルフサービスとは
「セルフサービスポータル」の解説前に、まず本記事における「セルフサービス」とは何かを明確にしてます。
セルフサービスとは、通常は従業員が行うサービスを顧客が行うことです。
身近にセルフサービスが採用されている例としては、消費者自らが商品精算を行うセルフレジや、顧客が自ら給油を行うセルフガソリンスタンドなどがあります。このように「セルフサービス」は、低価格・短時間での買い物を可能にする商品・サービスの提供形態として機能します。最近では飲食店において、配膳や片付けを顧客が行う形態をとるセルフサービス店舗の数も増えてきており、セルフサービス化が進んでいます。
企業間における主な差別化要因として従来まで注目されていたのは「サービスの充実度」でしたが、近年ではその風潮が変わり、サービスを削減しつつも顧客満足度を維持し、収益性の向上を図る動きが見え始めています。このトレンドに対応するのがセルフサービス機能です。
セルフサービス機能を充実させることにより、企業は顧客満足度を低下させることなく、人件費抑制による収益性の向上を見込むことができます。また同時に、コロナの感染拡大により急速に重要なニーズとなった感染症対策の促進という面でも重要な役割を果たしています。
また、このようなセルフサービスの取り組みをデジタル環境で行うようになったものをデジタルセルフサービスと言います。
セルフサービスポータルとは
デジタルセルフサービスを実用段階に落とし込んだものの一つをセルフサービスポータルと言い、本記事ではこのポータルを中心に説明します(「セルフサービスポータル」は、「デジタルセルフサービスポータル」と呼ばれることもありますが、本記事では「セルフサービスポータル」と表記します)。
セルフサービスポータルとは、従来はサービス提供者が行っていたサービスをエンドユーザーのみで完了できるように設計されたWebポータルサイトのことです。
セルフサービスポータル機能は、主に「自動化」と「豊富なナレッジベース」のキーワードによって説明されます。まずセルフサービスポータルは「自動化」を採用することにより、人の介入が必要な作業や繰り返しの作業を最小限に抑えることができます。
また、顧客はセルフサービスポータルに配置してあるナレッジベース(利用ガイド・よくある質問(FAQ)・説明動画・オンラインコミュニティ/フォーラムなど)を基に、利用希望のサービスの依頼や問題の報告、商品やサービスに関する情報の検索やダウンロードなど全てをプラットフォーム上で行えるようになります。これらは、トラブルの自己解決やユーザーの時間節約に繋がります。
セルフサービスポータルは、B2CやB2Bにおいてカスタマーサービスとしても、社内において業務効率化ツールとしても使用されます。
カスタマーサービスの場合、顧客はトラブル時でもヘルプデスクを介さずに簡単にインターフェースを操作して素早く情報を得ることができるため、サービス提供の効率化が見込めます。
社内ツールの場合、従業員が最小限の労力でトラブルに対処できるようになるため、業務プロセスの改善が期待できます。
セルフサービスポータルのメリット
セルフサービスポータルを採用することによって、ユーザーがヘルプデスクを通さずに自身の好きなタイミングでリクエストの実行や問題の解決が行えるようになることは、上記で説明しました。このことから、企業はセルフサービスポータルの配置によって ①事業の効率化 と ②顧客満足度や従業員満足度の向上 という大きく2つのメリットを受けることができます。
1. 事業の効率化
セルフサービスポータルの自動化機能によって煩雑な作業が減り、サポート担当の従業員数や従業員労働時間が削減されるため、企業はこれまでサポートにかけていた費用を浮かせることができます。サポートの負担軽減によって生まれた費用や余剰労働力を他の業務に当てれば、企業は新規事業開拓も見据えた事業の成長を見込めるようになります。
ガートナー社(2019)は、現在リアルタイムサポートによって解決している問題の40%がセルフサービスチャネルのみで解決できる問題であると指摘しており、その分をセルフサービスチャネルのみで解決することによって大幅なコスト削減になることを示唆しました。同社がリアルタイムサポートが完全なセルフサービスサポートに比べて80-100倍ものコストがかかると試算していることから、セルフサービスチャネルの活用による企業のコスト削減は相当のものになると予測できます。
2. 顧客/従業員満足度の向上
セルフサービスポータルが問題解決の迅速化やサービスの均質化、サポート対応件数の増加を実現することにより、顧客満足度や従業員満足度の大幅な向上が期待できます。
特に注目すべきは、問題解決の迅速化です。フォレスター社(2019)の調査においては、65%以上の顧客が「顧客の時間を重要視している企業は、優れたサービスを提供できる」という認識を持っており、顧客が時間に重きを置いて考えていることが明らかになりました。
このような背景から、セルフサービスポータルの提供を企業に期待する顧客は、世界平均で88%にも上ります(Statistica, 2018)。特にミレニアル世代では、サポートに問い合わせる前にFAQページを確認して問題を迅速に解決しようとする傾向があるため、セルフサービスポータルは一段と魅力的に映るでしょう。
このように、企業はセルフサービスポータルを用いることにより、事業の効率化を実現しながら顧客/従業員満足度の向上を期待することができるのです。コロナの流行により強力なデジタル機能を活用したリモートワークが推進されたことで、最近ではこれらのメリットが強く認識されるようになっています。
これらのメリットをチャットボットによるカスタマーサポートの例を用いて説明すると、次のようになります。
従来はオペレーターがリアルタイムで顧客のトラブルを解決していたため、顧客側は電話口で長く待たされたり、従業員の対応が悪かったりといったエクスぺリンスを受けることがありました。
しかしチャットボットサービスを充実させれば、24時間いつでもサポートを提供できるため顧客の時間の無駄が減ったり、同じシステムによっていつでも変わらないサービスを提供できるため、顧客がよくない対応を受ける可能性も激減します。
企業側も、チャットボットで対応できるトラブルが増えれば、コールセンターの小規模化に応じてサポート費用を削減することができます。また、従業員数が減れば社内教育も行き届きやすくなり、適切な対応ができる従業員のみを業務に当たらせるようになります。
セルフサービスポータルの導入事例
ここでは、セルフサービス機能をカスタマーポータルに実装したものを事例として紹介します。
大手保険企業のアリアンツ社は、弊社の大企業向けポータル製品 Liferay DXP を用いて構築したカスタマーポータルにセルフサービス機能をもたせた結果、顧客満足度の向上を実現することができました。
同社は、データベースなどの既存システムを統合してポータルサイトをリニューアルしたことで、顧客データの一元管理を容易に行えるようになりました。新カスタマーポータル My Insurance Portfolio では、顧客が保険プランの検索や注文だけでなく、他社の保険管理までをできるようになったため、顧客にとって非常に使いやすいポータルとなっています。同社としても、顧客にシームレスなエクスペリエンスを提供することで、顧客に優れたカスタマーエクスペリエンスを提供できるようになりました。
セルフサービスポータルの導入が必要な企業の特徴7つ
ここでは、セルフサービスポータルの導入が必要な企業の特徴7つをご紹介します。セルフサービスポータル導入を検討中の方々は、以下の7つの特徴が自社に当てはまっているかを検討し、セルフサービスポータルの導入が必要かどうか判断してみてください。
なお、本セクションは英文記事 “Self-Service Customer Portal: 7 Signs Your Company Needs One” の内容を一部抜粋したものです。
1.リアルタイムサービスで膨大なコスト負担がかかっている
ガートナー社の調査が「リアルタイムサポートは完全なセルフサービスサポートに比べて80-100倍のコストがかかる」と示したことから分かるように、セルフサービスを採用すれば格段にコストが抑えられます。セルフサービスポータルへの移行は初めは費用がかさみますが、長期的な観点では初期投資に見合うだけの費用対効果が得られます。また、セルフサービスへの注力により、コストを抑えたままより多くの顧客をサポートできるようにもなります。
2.従業員の生産性が低い
従業員の生産性が上がらないのは、従業員のタスクが多くなっていることに原因がある可能性があります。セルフサービスポータルによってユーザーからのリクエストの自動処理が可能になれば、従業員が同じような問い合わせへの対応にリソースを費やすことがなくなり、より複雑な問題への対応に注力することができるようになるため、生産性の向上に繋がります。
3.顧客に対する理解不足から適切な対応ができていない
セルフサービスポータルは、顧客行動の背景にある欲求や顧客の実際のニーズに対する理解を深め、対応が後手に回っている状態を解消します。企業はセルフサービスポータルを通して顧客の行動履歴を収集し、多く閲覧されている製品資料や製品活用例、FAQやQ&Aなどを確認することができます。企業はここから得られた顧客インサイトを基に課題を特定し、それに対して解決策を取ることで、提供するサービスや製品を継続的に改善できるようになります。
4. 顧客が配信コンテンツを見ていない
セルフサービスポータルでは、コンテンツを配信するチャネルが統合されているため、顧客が関連コンテンツを簡単に見つけることができます。これが実現すれば、顧客は製品・サービスについての知識を深めることができるため、企業と顧客との関係が強化されるでしょう。
5. 企業サイトのトラフィックが伸びていない
セルフサービスポータルの有効活用により、FacebookやGoogleなどのプラットフォームへの広告費をかけずに、企業サイトへのアクセス数を増やすことができます。
6. 既存顧客から良いクチコミが広まらない
「セルフサービスポータルのメリット」で述べたように、セルフサービスポータルの活用によりCXの改善が見込めるため、良い顧客体験を受けた顧客が好意的なレビューを残し、企業を知り合いに推薦する可能性が増えます。
7. 売上が低迷している
セルフサービスポータルの活用により優れた顧客体験を提供できれば、売上低迷からの脱却が期待できます。良いCXを受けた顧客が再び購買行動を起こすためであるのはもちろん、その顧客から推薦を受けた消費者による購買行動を見込むこともできるようになるためです。
また、企業は自動化されたポータルサイトを通してお客様に効率的なサービスを提供することで、顧客に利便性を認知させることもできます。このこともクチコミによって広まれば、業界内の権威として企業の信頼度が向上し、売上高にも好影響が及ぶでしょう。
さいごに
以上のことから、企業はセルフサービスポータルを導入することにより、顧客満足度やCXを向上しつつコスト削減を期待することができます。B2C、B2Bに関わらず、特に膨大な顧客数を持つ大企業は、上記7つの特徴のうち最低でも1項目は当てはまっているのではないでしょうか。
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